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2009年11月10日 (火)

読書「春にして君を離れ」

「春にして君を離れ」

かの有名な、「春にして君を離れ」。

この年にして初めて読みました。たしかに傑作です。若いときに読んでももちろんいいですが、歳食ってから読んでも身につまされる感が深くなって、またいい小説だと思いました。しかしこれは人に……特に自分の個人的に知っている人には、大変薦めにくい。思いこんでいた人間関係が違っていた、自分像が、自分が思い描いていたものとは全然違う非道いものだったと思い知らされた、という話なので。

ハヤカワクリスティー文庫は、字が大きくて100冊もあって、しかも解説陣が豪華で楽しいのが特徴です。柔らかいところでははやみねかおるや恩田陸、漫画家の川原泉、JETなども書いていますが、この「春にして君を離れ」では、栗本薫が解説を書いていて、ダンナに読ませてその感想を書いてるんですね。いや、勇気ありますな。ちなみに、主人公がこんな風になったのには、主人公の夫にも大いに責任があるんだから、主人公の夫が被害者面をするのは云々、というような感想です。

栗本薫の訃報に接し、最近は新刊を追っかけることもなく、GSも中途で読まないままになってしまっていたなあ、と感慨しばし。

良き夫、良き子供達、経済的にも家庭的にも恵まれて、なおかつ自分でも努力をして、非の打ち所のない人生を送ってきた、と、過去の自分にも現在の自分にも満足している女性、ジョーン・スカダモア。

余儀ない旅の途中、汽車の不通で足止めを食い、話の通じる人のいない砂漠で独り過ごすことになる。独りで、することもなく過ごす長い時間。今まで忙しさにかまけて考えないでいた過去のエピソードのあれこれが、新たな意味を持って迫ってくる。

「家族には愛情を注ぎ、愛情を注がれた。苦言を呈したこともあるけれど、それも相手を思いやってのこと。最終的には私の言ったことに従って、幸せになったじゃないの。家族だけじゃなく使用人に対しても。」

……彼女はそう思ってきたのだけれど。それはみな偽り。しかも、彼女を思う故に彼女に夢を見させていたのではなく、彼女に期待しないために、偽りの態度しかとらない……

これだけでも十分に怖い話なんですが、真実を知った後の話もまた怖いです。

春にして君を離れ  ハヤカワ文庫  
 アガサ・クリスティー著
中村 妙子訳
税込価格: ¥693 (本体 : ¥660)
出版 : 早川書房
サイズ : 16cm / 331p
ISBN : 4-15-130081-3
発行年月 : 2004.4

題名:ハルニシテキミヲハナレ 作者:クリスティー アガサ ジャンル: メディア: 

2009

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