« 読書「日の名残り」 | トップページ | 特撮博物館に行きました »

2012年8月24日 (金)

読書「琥珀の眼の兎」

読書「琥珀の眼の兎」 エドマンド・ドゥ・ヴァール

久しぶりにハヤカワで出たいい本でした。
「琥珀の眼の兎」は根付けです。根付けといえば江戸時代にキセルなどのアクセサリーとして使われていて、明治にはいって実用品としては使われなくなり、海外では高い評価を得るものの日本ではごく少数の例外以外はゴミ同然の扱われ方をしつつも細々と命脈を長らえ、現在に至って携帯のストラップとして甦った小さな愛らしい美術品……とまとめていいでしょうかね?


内容(「BOOK」データベースより)
陶芸家のエドマンドは東京の大叔父の部屋で出会った264の美しい根付に魅了された。やがて根付を相続した彼は、その来歴を調べはじめる。根付を最初に手に入れたのは、彼の曾祖叔父だった。19世紀後半に日本から輸出された根付はマルセイユに上陸して、美術蒐集が趣味の曾祖叔父の手に渡った。根付たちは華やかなりし頃のパリでプルーストやルノワールに愛でられ、その後、ウィーンの大富豪の親類の手に。だが、ナチスの魔の手が一族と根付に忍びよってくる―。根付の壮大な旅路を追いながら、エドマンドは一族の哀しい歴史を知る。全英を絶賛の渦に巻き込んだ傑作ノンフィクション。「エコノミスト」紙、「サンデー・タイムズ」紙コスタ賞ブック・オブ・ザ・イヤーに選出、王立文学協会オンダーチェ賞受賞。

はじめ、系図のページをおっくりかえしひっくりかえししないと、話がぜんぜん見えてきません。だれがだれの息子だって?このエピソードのこの人は?みたいな。
なので、ゆっくりゆっくり読んでいきました。ゆっくり読むのが良い本です。
一族が富を得、絶頂を極め、しかしナチスの台頭とともにすべてがなくなってしまう。根付けはそれを見てきた。 明治維新で、それまでの価値観がひっくりかえったこと、その時の混乱が、本に直接書かれてはいませんが、重ね合わされます。

強制収容所からのがれるべく、ウィーン脱出のために奔走する場面、脱出後生きる気力を無くした年寄りたちの描写が、東日本大震災時の自分や親と重ね合わされます。もちろんこれは予期された読まれ方ではありませんが、私はそのように読んでしまいました。

一族の哀しい歴史、とありますが、狂言回しが「手で愛玩されるべきものである」根付けだからでしょうか、結末はけして暗くありません。
ねえ兎。いろいろあったね。けどそれでもなんだか大丈夫だったじゃない。今こうしてここにいられるのはうれしいね。

|

« 読書「日の名残り」 | トップページ | 特撮博物館に行きました »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/137959/55497907

この記事へのトラックバック一覧です: 読書「琥珀の眼の兎」:

« 読書「日の名残り」 | トップページ | 特撮博物館に行きました »